美濃徴古館


美濃徴古館 と栄一
(岐阜タイムス 昭和21年6月10日)
 岐阜に博物館が一つもなかった頃、個人の経営する歴史博物館がありました。それが「美濃徴古館」別称 「小川徴古館」です。「美濃徴古館」は創始者小川栄一の自宅(揖斐郡鴬村)にあり、生涯をかけた調査によって収集した資料を公開していました。未発表の資料や集成リストさえ研究者らに公開しており、美濃の情報館 としての性格を持っていました。明治末期から公開していましたが、昭和38年に栄一が亡くなり、事実上閉鎖し ました。
 研究分野は考古学を中心に、文献史学・民俗・金石文・陶磁器・戦災・近代資料・自然と多彩で、郷土研究のほとんどの分野に及んでいました。特に戦時中は、陶製の十能・水筒などを使用目的でなく戦災資料として保存するために購入し、1点1点に箱を作って保存していました。この点にも先見性が見られます。
 収集資料は数万点に及び、その子・孫の資料を含めて「小川コレクション」と呼ばれており、一部は岐阜市歴史博物館などで展示されています。
 皆さんに是非考えて頂きたい点は、栄一がいなかったら県史や市史に記される幾つかの内容が分かっていない点、逆に先人達がそれほど見て回らなかった遺跡はどれほど分かっているのか、という点です。遺跡や遺 物に対して、そして先人の業績に対して、私たちは真摯に向い合わなければなりません。そして、このような資 料の収集・保管活動は、もはや個人の負担で行なう時代ではないと考えています。そこで県内外を問わず、資 料の保管・整理・活用を真剣に行なう機関へ譲渡を考えています。


小川栄一著作目録
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