前期古墳 中国陶?

坏形土器
 下の写真は大正3年3月21日、栄一が各務原市三井塚越を踏査した時に、無槨の古墳の主体部から採集した資料です。
 大きさは口径12.8cm、底径3.8cm、器高3.9cm、現重量121gです。ロクロ左回転成形で、底部・下半部は箆削り成形しています。口縁は受口状 に作り、体部には雲文を思わせる櫛描文を施しており、日本では見たことのない技法です。
 焼成は須恵器と比べるとやや甘いのですが、重ね焼きのため、口縁と体部・底部との色調が異なっています。
 栄一は「支那考古学ニ関スル最近ノ諸発見」という記録の中に「信陽漢冢陶洗」というものがあることから、中国産の可能性が高いと考え、研究 者らに意見を求めていたようです。
 恥ずかしながら、私も製作の特徴などから中国産ではないかと思いますが、それ以上の情報を得ていません。この製品の断面図だけを見ると、 古墳時代初期のS字口縁鉢にそっくりです。ただし、丸底でない点、文様のある点が異なります。しかし、全く無関係のものか否か、現状では分か りません。そして、このような資料が本当にこの1点のみなのか、という疑問を強く感じます。
 仮に中国産としても、中国のどの地域のどの時期のものが美濃に来ていたのか、それを特定することは極めて意義深いことです。
 この資料について、類例をご存じの方、正体をご存じの方、是非とも御教示をお願いします。


三井塚越出土土器
(中国陶の可能性がある)

栄一の研究原稿 (昭和21年6月30日)

同書 付記


栄一のメモ
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